嗜好と思考を整理し、人の暮らしをアップデートするアップデーター・はらむらようこさん

RIK
どれくらいの期間、お客様と一緒に見直しと実践をしていくんですか? 
はらむら
とりあえず3ヶ月で、実際にお会いして打合せしたり、お買い物同行したりするのは4回です。3ヶ月の間はほぼ毎日LINEでやり取りして、一緒に見直していきます。
RIK
そうなんですね。お客様の変化はいつの時点で感じることが多いですか? 
はらむら
だいたい2~3回目の打合せくらいに手応えを感じ出すことが多いですね。お客様に「自分を大切にする習慣」を身に着けてもらうように伝え続けて、お客さんも「あ、自分を大切にするってこういうことなんだ」っと気づくのがそれくらいのタイミングかもしれないです。生活空間や生活習慣がかわることで気持ちの捉え方が変わるんです。
RIK
自分に何かするというと、ごちそうを食べたり、自分にご褒美を買ったりと行った行動を連想しますが「自分を大事に」とはまた違うような気がしますね。

はらむら
特に専業主婦の方は「私なんてこんなのでいいから」という発言が多いんです。でも私はそれを認めたくない、もっと自分を大切にしてほしいと思っていてどうしても女性は「ケアする側」の立場になりがちなので自分をケアすることに慣れていないんです。“女の贅沢”といえば高級バッグを買うとか、高級スパに行くとかいきなり大金を出すことになりがちなんですよね。私はこの「女のご褒美=高級バッグ」は企業の刷り込みだと思っています。ある意味洗脳に近い気も。「本当に欲しいもの」「したいこと」が見つからないから、杓子定規な「贅沢」をして満足した気になっているだけじゃない?って。 
RIK
!! 確かに!たまに「頑張っている自分へのご褒美」と思ってちょっとお高いバッグ買いますが、結構、その、すぐ、飽きますね…。満足した気になっただけ、かもしれないです。 
はらむら
40歳になった記念に高級バッグが欲しいという教授職の女性のお客様がいまして。職場まで結構歩くしPCを持ち歩くのでリュックサックを使用していたんです。そのリュックサックと同じものを学生が使用しているのを目にして、すごく恥ずかしいと感じたそうなんですね。それで「40歳になったことだしブランドの高級バッグが欲しいから見立ててほしい」というご要望でした。この女性の場合、欲望が2つあるんですね。“品質の良いものを持ってカッコよく見せたい”という欲望と“自身の40歳の記念になにか買いたい”という欲望。この2つの欲望が「高級ブランドバッグを買う」ということに結びついてしまった。まず高級ブランドバッグの賞味期限ほど短いものはないですよ、とお伝えしました。大枚はたいたバッグに魅力を感じなくなった時、捨てられますか?とお聞きしました。答えはNOでした。ヒアリングして話し合った結果、イタリアの上質な革を使用したノーブランドのバッグを購入されました。斜めがけにできて軽くて、メンテナンスをすれば一生使える大人の女性に似合う素敵なバッグです。当初の購入予算は20万円だったのですが5万円で済みましたし、なによりご本人様にものすごく満足していただけました。
RIK
それですね!欲望の整理が出来てないから「何かご褒美」となると「高級で人が羨むもの」になりがちなんですね!(超納得) 
はらむら
40歳の記念になにかほしいという欲望は理解できるし、今まで頑張って働いてその記念のことですからその欲望はとても大事なんです。けど安易に「高級なブランドもの」を選ばないように、しっかりヒアリングして解きほぐすのも私の役目だと思っています。


アップデート事例「わたしの好きなものを知れてから、コンプレックスがなくなり欲しいものしかいらないとまで思うようになりました。素敵だと思える今の家が大好きです。」と奥様談。


オフィスのアップデート事例「すっきりして広々して気持ちいいオフィスで働けることが自慢になりました。」と社員さんも大満足

RIK
そういえば、はらむらさんの著書の中の「ていねいな暮らし戦争」というワードがとてもおもしろかったです。 
はらむら
バブルの頃だったら、女のヒエラルキーのトップって「裕福な奥様のティーパーティー」「ブランドで身を固める」などの有閑マダムたちだったと思うんですね。でも現代はこんがらがっていて、ヒエラルキーのトップが不在になったかわりに多岐にわたるマウンティングが繰り広げられていて。そのうちの一つが「ていねいな暮らし戦争」だと思っています。大豆から味噌を作るとか、おしぼりが手縫いとか、オーガニック的なものにこだわったり。もちろんご本人がこだわりを持ってやる分には何の問題もないんです。「ていねいな暮らし」にこだわる自分を見せつけたい人の場合、その価値観を押し付けてしまって周囲やご本人も苦しかったり。そして一番気をつけてほしいのが「ていねいな暮らし」をしている人を見て「私はこんな手抜きで努力が足りないんじゃないか」って思って自分をダメなように感じてしまうこと。私自身も結婚して共働きで遅くまで働いていた時、深夜12時前でもお出汁をとったりしてました。今思えば深夜に出汁とるとか、どんな妖怪だよって思いますけど(笑)。でもその当時はそれが「ちゃんと」していることだと思っていたんですよね。しんどくてイライラしているのに。「ていねいな暮らし」ブームのおかげで、それができない自分はなまけている感じがしてしまう。でも、そんなの人それぞれですよね。顆粒ダシを使おうが、出来合いのものを買ってきて食卓に並べようが別にいいじゃないって。今を生きてる自分を大事にしようよって意味をこめて「ていねいな暮らし戦争」と呼んでいます。もう「そんな戦争やめようよ」と。
RIK
最後にアップデーターとしての熱い思いなどあれば聞かせてください。 
はらむら
本当にあなたにとっての価値のあるもの「ゴールド」なものと暮らしてほしいという価値観を染み付かせる時間をかけること。話しをとことん聞く事、もっとあなたにはふさわしいファッションと空間があるという熱い思い、その1点だけでやっています。「思いやり」と「美意識」で仕事をしていると思っています。私は、アップデーターの仕事を“文化的登山”のようなものだと思っていて。一緒に山頂を目指す。山頂にたどりついて美味しい空気と素晴らしい景色と達成感の中で生きてほしい、と心から思っています。そのために私はガイドとして安全で楽しい登山にお連れする、というスタンスでこれからもやっていきたいと思っています

 

 

文化的登山…!はらむらさんの独創的な言葉で語られる数々の価値観。はらむらさんご自身もすごく魅力的で自分をとても大事にしていらっしゃって、だからこそたくさんのお客様からオファーがあるんだと思いました。お買い物同行のBefore &After写真も見せていただいたのですが皆さんとっても素敵になられていて、見た目も気持ちもアップデート!って感じで、人々の生活に感度を取り戻す本当にステキなお仕事だなあと思いました。

そんなはらむらさんの考え方やメソッド、ノウハウが詰まった面白すぎる著書も一読の価値ありです。

「好きから始める暮らしの片づけ」

 

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