新建新聞社主催の「住宅産業大予測2018」レポートの続きです。⇒前回の記事はこちら
実に様々な要因が住宅業界に迫る「2020年」。そのために2018年に備えておくべき、しておくべきことはなんなのか…。三浦氏のお話しの中から「2018年にやるべきこと」をご紹介します。
「2018年にやるべきこと」では4つのテーマに絞られていました。テーマごとにやるべきこと、を書き出していきます。
テーマ(1)縮小市場でどう生きる「未来創造」
建築の多角化・事業の多角化
現在、新築の注文住宅をメインにしているなら建築の多角化を検討する必要があります。ストックビジネス(定期メンテナンスなど)、インテリア&エクステリアの提案も含めて一件当たりの単価をアップさせる、不動産売買、非住宅以外にも進出するなど、多角的な建築の提案を視野に入れなければならないでしょう。
事業の多角化
現在、建築事業はメインだと思いますがさらに、ライフスタイル産業や、ショップ運営、農業、高齢者向け事業など建築の枠を超えた事業展開も視野に入れなければならないでしょう。
テーマ(2)人とチームがすべて「ヒューマンファースト」
人間研究
1.快情動と不快情動を理解する
人=社会、として考えることが大切です。生活学=ライフスタイル、社会学=SNS、行動心理学=コミュニティ、経済学=地域活性化など人間を研究することは全てにつながっているといっても過言ではありません。三浦氏は一見、ビジネスに関連性のないような「脳科学」を認知して意図的に行動することは効果があると言っていました。人の脳は実に95%のことは無意識に感じています。無意識下で感じることを「情動」といい、無意識の安心や心地よさ、楽しい、好きと感じることを「快情動」と呼ぶそうです。反対に無意識の不安や居心地の悪さ、ダサい、嫌いと感じることを「不快情動」と呼びます。この「不快情動」を顧客に感じさせないために、ファーストコンタクトが大切になります。基本的なことですが、身だしなみや受け答えの対応、マナー、お迎えする席やオフィスの環境などへの配慮が必要です。お客様に「不快情動」を持たせない、弱点をつぶすとボトムアップができる、という理論です。
2.報酬予測誤差を理解する
満足度を感じる時に報酬予測より良い結果が得られればその誤差により、感じる満足度がぐぐっとあがります。報酬予測よりも多く良い結果であった場合はドーパミンの活動量は多く、予測通りの結果の場合はドーパミン活動に変化はありません。予測した結果と違う場合はドーパミンの活動量は少なくなります。報酬予予測と実際の結果とのズレにドーパミンの活動量は反応します。常に満足の臨界点の状態を維持して、その予測を上回るホスピタリティやサービスをすれば、より高い満足度を与えることができファン化につながります。
プロスペクト理論というものでは、人は儲け話よりも損をする話の方が敏感になるそうです。人はできるだけ「リスクを取らずに儲けたい」とは思うものですが実際にはそんなうまい話はないと理解して生きています。しかし損をするならリスクをとってでも損を減らしたい、と思うものだそうです。少額で始めた賭け事を回収したくて続けてしまうように「現状より損をしてしまうこと」の方に敏感なのです。
例えば
「高性能化することで30年で150万円得しますよ」というより
「高性能化しないと30年で150万の損しますよ」と伝えるほうが、反応率がいいということです。
働き方改革×チーム力
2019年度あたりから施行されるかもしれない残業上限制度。破ると罰則規定もあるかもしれないということで、ハードワークで残業が多いとされている建築業においても働き方の見直しや、組織の在り方を見直さなければならばくなります。残業をしなくても業務が回るように効率を良くし、生産性の向上を図る従来型組織からホラクラシー組織への転換など、組織力を強めるよりチーム力の強い会社への変革が必要です。
内製化&パートナーシップ
上記のホラクラシー組織になり各チームに権限が与えられれば、もっと自由にフリーランス・フリーエージェントとの仕事がしやすくなりより効率的になります。住宅版のフリーエージェントとしては設計者や営業スタッフ、現場監督、企画・広報などが考えられます。フリーエージェントに託せる部分は託し、現状、協力業者に外注に出している工事部分は内製化した方がよいのでは、と三浦氏。なぜなら作り手である大工が減少の一途をたどっており、このままでは受注があっても競合他社と大工の奪い合いになる恐れがあるからです。多能工が提唱され大工が配筋や配管、電気工事などまで掛け持ちし、生産性の向上につながる例もでてきています。こういった横にできることができる多能工も重要ですが、さらに大工が現場監督や営業など縦にできることを増やしていく多能工に注目すれば大工の社員化もかなうのではないでしょうか。
3つめ「顧客視点」と4つめ「地力向上」のテーマについては次回、ご紹介します!