今話題の行動経済学をネタにした漫画本「ヘンテコノミクス」をご存知ですか?昨年末の新建ハウジングの三浦氏のセミナーでもテーマとなった「ヒューマンファースト」。その中で行動経済学の一つである「プロスペクト理論」について記載しましたが、この漫画「ヘンテコノミクス」では経営やサービスの運営において役に立ちそうな行動経済学がたくさん載っています。行動経済学の本はちょっと小難しくてとっつきにくい印象ですが、この漫画の特筆すべきは親しみやすい絵柄。藤子不二雄や赤塚不二夫を彷彿とさせる昭和のギャグマンガ感のある絵柄に思わずニヤニヤします。びっしり書かれた吹き出しの文字も口語なので読みやすく、最後に解説文が記載されていてとってもわかりやすい構成になっています。いくつか抜粋してご紹介します。
◆おとり効果
(数十年前の設定で)テストマーケティングでは大好評だったホームベーカリー。リリースしたところ、売れ行きが良くありません。ターゲットの主婦層も「欲しいんだけど…」と買うのを躊躇している様子。どうやら自宅でパンを焼くという行為が市民権を得てないよう。そこでメーカーはあえて上位機種をリリースすることにしました。そうすると一番最初にリリースされた機種がどんどん売れだしました。これは人々に世の中である一定の評価を得ているカテゴリーである、と思わせることができたので「買うか、買わないか」という対象から「どちらを買うか」という対象に変化したのです。1つでは価値を決められなかった物でもおとりとして新しい選択肢が追加された途端、物事が動き出すことがあるようです。
◆極端回避性
三人の仲良し主婦は月に数回同じレストランでランチをします。このレストランにはメニューはA・Bランチの2つしかなくAランチは2,000円、Bランチは1,500円です。三人の主婦は決まって1,500円のBランチを頼んでいました。その理由はAランチはサラダとスープがついているだけなのに2,000円もするなんて、というものでした。しかしある日、3,000円のSランチが登場しました。そうすると三人の主婦は2,000円のAランチを頼むようになりました。「一番下はいやだし、3,000円のランチはコスパが悪い」と。3段階の選択肢を提示されると一番上や下という極端な選択を回避してできるだけ無難な真ん中を選択する傾向があります。最初は高いと避けていた金額でも選択肢が変わることで評価が変わることがあるようです。面白いですね。
◆上昇選好
大手の自動車製造会社タヌキモータースと中小の自動車製造会社うさぎ自動車でそれぞれ働くことになったリスさんたち。報酬はどちらの会社も7日間でどんぐり70個。せっせと働くリスさんたち。一週間経ち、うさぎ自動車の方が生産性が高くより多くの自動車を生産できました。その理由は、たぬきモータースは初日から1日10個ずつどんぐりを払いました。一方、うさぎモータースは初日は7個、そこから1日一個ずつ報酬のどんぐりの数を増やしていきました。これは上昇選好と呼ばれるだんだんと良くなる方を好む心理傾向によるもので、うさぎ自動車で働いていたリスの方が大きくやる気が向上したので生産性があがったということです。
◆ピークエンドの法則
過去のある体験を思い出す時にその体験の中でもっとも印象の強い瞬間と最後の終わった瞬間を平均化してしまう、という傾向があるようです。例えば歯医者でものすごく苦痛を感じてそのまま治療が終わる場合と、ものすごく苦痛を感じた治療の後に痛みの少ない治療をして終わった場合とでは、後者の方が治療にかかった時間は長いのに苦痛の印象がやわらぐ場合があるようです。確かに!これは体感としてわかる気がします。仕事がハードだった時にそのまま帰るのと、最後に無駄なおしゃべりをして笑って帰ったり、一杯飲んで帰るのとでは後者の方が仕事のしんどさがやわらぎますよね。
印象的だった4つをあげてみましたが漫画には23項目の行動経済学について掲載されています。読みやすく、腹にストンと落ちる「ヘンテコノミクス」おすすめです!
行動経済学まんが ヘンテコノミクス
原作 佐藤 雅彦 /菅 俊一
画 高橋 秀明