チリウヒーター主催の造園家の荻野寿也氏のセミナー「庭から建築を考える」に参加してきましたのでセミナーレポートをご紹介します。
建築と造園を対等に捉え、里山の原風景を庭に取り入れた庭づくりに定評がある荻野寿也氏は、建築家からのオファーが絶えない注目の造園家です。さっそく、セミナーの中で印象に残ったポイントをレポートします。
・1畳分のスペースでも5本の木を植えることができる
狭小地などの場合は建物面積を広くとりたいため、庭は不要という施主も多いのだとか。「庭に割けるスペースがないといわれても、畳一畳分のスペースで5本の木を植えることができます。それだけで建築としての価値がぐっと上がります。そのことを施主と建築家に理解してもらえれば空間はもっと豊かに美しくなります。」と荻野氏。狭いスペースに木を植える時は高さの違う木を植えて立体的にするとよいのだそうです。高木は二階からの目線、中木は一階もしくは地上を歩いている時の目線、低木は座った時の目線、そして足元のグランドカバー。これらの高さが異なる植栽を組み合わせていくことで全体が立体的になります。また建築家の横内敏人氏は「建築の内部に10万円かけてもどこにつかったかわかりにくいが、植栽に10万円かけるとだいぶ違ってくる」とおっしゃっているようです。それだけ植栽が建築に与える影響、付加価値をもたらすということでしょう。
・その家に訪れる「現象」を考慮する
建築家の伊礼智氏との案件で、建築予定の場所は北に位置した西日の激しい場所でした。西日が激しいということは日当たりがとても良いということ。そこで1階のピロティから床をつきぬけ、屋根の上までまっすぐ伸ばしてみたそうです。西日にあたると木漏れ日が生まれ風にそよぐと何とも言えない爽やかな映像をウッドデッキに映し出してくれます。このように一見、マイナスのようにとれるポイントでも逆手にとって演出すればとても美しい佇まいに変貌することも。
・内でも外でもない中間領域のある建築は心地よい
プライベートが確保された外部空間で過ごすのは何事にも代えがたい心地よさがあります。「外とのつながりを壊さないように庭を間取りの延長として考えることが大切」と。ウッドデッキは使えないと意味がありません。部屋履きのまま出れるように室内の床とフラットにするのがいいと思います。庭間はキッチンと近い場所に持ってくるのがおすすめだそう。第二のダイニングとして捉え、キッチンからの導線を考慮しましょう。多くの家がウッドデッキを後付けにするので思ったほど活用できていません。他の部屋と同じように導線計画を考える必要があります。魅力的な中間領域のある建築は差別化にもなります。
荻野氏のセミナーレポートの続きは後編でお伝えします。荻野氏の庭づくりのメソッドや考え方が集約された著書「美しい住まいの庭 85のレシピ」も実例がたくさんのっていて、とてもわかりやすくてオススメです。