「ストック重視の住宅政策になったから今後はリフォーム需要が拡大に」とよく耳にします。2010年の閣議決定による新成長戦略で「新築(フロー)重視から、既存(ストック)重視の住宅政策に見直す方針」を示した事も記憶に新しいですよね。需要拡大の要因としてメインの施主である60代の世代が多いことも理由の一つなんだろうなというのもわかります。今更ながらですが、この一連の流れをおさらいして「住宅の価値」について考えてみようと思います。
◆そもそもなんで「ストック重視の住宅政策」が必要なの?
日本の住宅の耐用年数は30年程度ですが市場の流通では20年で価値を失うとされています。確かに何千万円もかけて購入するのにたった20数年で価値がなくなるなんて、と思いませんか。アメリカでは「住宅投資額」と同等以上の「住宅ストック資産額」が形成される一方、日本では「住宅ストック資産額」が500兆円も少ないという現状です。この現状をどうにかするための策が「ストック重視の住宅政策」です。アメリカの例で言うと、区画割りや植栽、景観に工夫をした住宅地では長期利用が実現されています。実際に経年で価値を高める住宅地も実在しています。
※経年における住宅資産価値の比較 出典:国民生活センター
住宅の価値は土地、建物、外構・植栽、維持管理、地域の治安などで構成されます。経年で価値を失う住宅と価値を高める住宅との差は、新築後の住まい方、維持管理、追加投資などのマネジメントにあります。管理や追加投資の方法を国民全員で共有することが目下の課題といえるようです。
住宅投資が資産として蓄積されないという、悲しい「負の連鎖」を断ち切るために建物価格評価方法の改善、中古住宅流通市場の改善、住宅金融市場との連携によって住宅の長期用を実現することが求められているのです。
そして数世代にわたり利用できる長期優良住宅の建設、適切な維持管理、流通のしくみを構築するほか、消費者が安心してリフォームできる環境整備が必要になったのです。
◆住宅の長期利用が生む資産価値の向上
不動産の価値はその不動産から将来どれだけの効用を生むのかで決まります。これまで建物の価値は直線的に減価すると考えてきました。追加投資(リノベーション・リフォーム)の有無にかかわらず「経年」という事実によって不可避的に減価してたのが今までの考え方でした。
これからは、将来どれだけの期間利用できるかという予測によって「不動産価値」が決定されることになりそうです。追加投資(リノベーション・リフォーム)によって残存利用可能期間を30年以上、できれば60年以上を保持することが資産価値を保持するポイントです。
既存住宅における「追加投資(リノベーション・リフォーム)」の重要性は理解できてきました。
次に、実際、リフォームを求める消費者が「リフォーム」について不安に思う点も見ていきましょう。
・見積もりの相場や適正価格がわからない 50%
・施工が適正に行われるか 39.7%
・いろんな業者特徴を比較しにくい 29.8%
・業者が誠意をもって行ってくれるか 25.7%
・業者選び、手続きが面倒そう 25.6%
出典:国土交通省「中古住宅・リフォームトータルプラン参考資料」
一時期世間を賑わせた「悪徳リフォーム業者」社会問題になった時がありました。そういうイメージがまだあるのでしょうか、業者選びや誠意について不安だと答えています。あと、現実問題どこの誰に頼むのかわからないという疑問もあります。
またリノベーション・リフォームが必要な中古住宅購入に求めることは以下のとおり。・なにか問題が起きた時に保障してくれる制度 41.8%
・住宅エコポイントなど支援制度の充実 30.6%
・安心できる家かどうかの診断制度(中古住宅診断制度)23.7%
・いつ建てられた家でいつリフォームされた家なのか(中古住宅履歴)22.7%
・中古住宅に評判やQ&Aなどの口コミサイト 12.3%
出典:国土交通省「中古住宅・リフォームトータルプラン参考資料」
こちらは中古住宅を買う時の不安や買った後のトラブルへの不安が如実にでていますね。
上記の2つの消費者の不安点を解消するために国も様々な施策をうっています。
まず1点目の業者選びの不安については、安心してリフォームを行える環境を整備するために、2014年9月に住宅リフォーム事業者団体登録制度が施行されました。
登録に関し必要な要件を満たす住宅リフォーム事業者団体を国が登録・公表することにより、住宅リフォーム事業者の業務の適正な運営、消費者への情報提供等を行います。
2点めの不安の解消についても、 既存住宅・リフォーム用の保険の整備も進んでいます。建物検査(インスペクション)と保証がセットになった保険制度を利用することで、欠陥や不具合の補修を受けることができます。「リフォーム瑕疵保険」では、工事中や工事完了後に、検査員が現場検査を行います。これにより、質の高い施工が確保されます。
このように色々な施策を打ち出して追加投資(リノベーション・リフォーム)を推進し「既存(ストック住宅)の資産価値を高めることを目的としています。冒頭でも出てきましたが「ストック住宅の価値」を資産価値を高めるのは「建物単体」ではなく、地域の環境や区画割りや植栽、景観に工夫をした住宅地であることが大事です。この部分の共通理解を住民が深め「まちづくり」自体をしていかないといけないのでしょう。なんだか大きい話ですが、一人ひとりの意識レベルで考えていくべきなのかもしれません。