生涯顧客の創出の濃密な接点。「職人」の意識改革で未来が繋がる

今年も新建新聞社が主催する「住宅産業大予測フォーラム2017」に参加してきましたのでレポートします。今年参加したCybozu Days 2016 でもそうでしたが「多様性に富んだ働き方」というものが求められています。そしてそれは「働く人の意識」の持ち方にも大きく直結しています。

ゲストスピーカーとして登壇していた有限会社すみれ建築工房の高橋剛志氏はご自身の苦しい経験から「職人が安心して将来設計を考えられる環境」を目指し“職人起業塾”を主宰しています。昨今、職人不足が叫び続けられていますが、国が支援しても育成がままなっていない状況です。なぜ、国の支援があっても育成計画が成り立たないのでしょうか?高橋氏はその答えを「育てることと儲かることは全く別のこと」だからだと言っていました。儲けを出さない大工にお金はかけられないからです。国からの補助金を割り当てても不足分は工務店が被ることになっている現状があります。それは大きなリスクであり、職人不足の現状、育成の重要性が痛いほどわかっていても育成できない現状があるんですね。

新築着工数が右肩下がりだと言われ続け、その現実が建築業にのしかかっています。今後は既存住宅の再生だ!とリフォーム需要の伸びが見込まれましたが、予想よりは伸びておらず、また大手ハウスメーカーや家電量販店などもリフォーム事業に参画しはじめ、工務店の仕事の枠に食い込んできている状態です。大手メーカーは資本はたくさんあるので地域の競合を潰しにかかるかもしれません。「街の電気屋さん」が一掃されたように、住宅業界でももしかしたら同じことが起こってしまうかもしれない、と高橋氏は危惧していました。

そして「これからはホンモノの時代になる」と。本当に顧客を大事にし、本当に従業員を大事にし、本当に取引先と、社会と共存共栄を目指している「ホンモノ」の時代になると。ITの発展によりあらゆる情報が発信され、あらゆる不正が白日の元にさらされる時代です。嘘やごまかし、虚栄は通用しない世の中にもうなっている、と。

「ホンモノ」が大事な理由はよく理解できますよね。では、この厳しい住宅業界の現実をどう乗り切るのか。ものすごく根本的なことですが住宅というものは「完工」しないと売上にならないですよね。その「完工」に一番近いところにいるのは、他ならない職人なんですよね。住宅業界のマーケットがどうとか次の新規顧客の創造の前に、一度「完工」したお客様がずっと繋がっていてくれるように顧客接点を強化する、生涯顧客の創造を職人自身が行うことで、自然と売上や利益が上がることに繋がっていく、と。つまり、お客様に「一生あなたの会社に頼みたい」と言わしめるためには、経営者と想いを共有する職人さんが必要不可欠なんです。この経営者と想いを同じにできる職人(現場実務者)が最も濃密な顧客との接点になるのです。職人、現場実務者の「意識改革」によって未来が切り開かれる、と高橋氏は強くおっしゃっていました。

それでは具体的に現場実務者(職人)と一緒に未来を作るにはどのようなビジネスモデルが必要か記載されていましたのでご紹介します。

1.意識を変える行動
2.理念、生き様、人生の目的、一生のミッションを明確にする
3.第二領域に取り込む
4.USPとコア・コンピタンスを明らかにする
5.ライフスタイル提案を行うスキームを確立する
6.ライフタイムバリューに着目し、フロントエンド、バックエンドの商品を持つ
7.リスク・リバーサルを明確にする
8.「義と利」日本式マーケティング手法を取り入れる
9.目的と手段について明確にする

ズラっと並べると小難しく見えますが、誰かに自分の想いやビジョンを共有するには必要な項目ばかりですね。そしてビジネスとして利を出すにも不可欠なことだと思います。

有限会社すみれ建築工房
住宅産業大予測フォーラム2017 / 新建新聞社