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庭×サウナの新事業!新たな庭の価値を創造する(株)彩園
福岡県小郡市でみどり豊かな庭づくりを提唱している株式会社彩園。2023年から“サウナガーデン”をテーマに新展開。庭にサウナを設置し、より心地よく庭で過ごす体験を通じて庭の価値をあげるための取り組みをしています。代表取締役の木下恵介氏にお話しをお聞きしました。
ーー彩園の特長をお聞かせください。
「造園業をメインにしていたため、みどりを中心とした提案が多いのが弊社の特長です。また土中環境を再生して整えていくことも弊社の特長なのですが、土を改善してそこで植物を育てていくのをお客様にご理解いただきお客様も庭の再生を楽しんでくれている方が多いです。」
ーー土中環境から整備するのですか!?
「庭木が弱ったり、庭が荒れるとお客様は「自分の管理が悪かったせいだ」とご自身を責められる方がいます。管理しきれないならもう植えない方がいい…と植物が好きなのに、庭木を諦める選択をする方も。庭の提案自体が出来た時がピークで、その後のお手入れや管理をお客様に任せっぱなしになってしまうと、そういう事態を招くことになります。私は以前、とあるセミナーで高田環境設計の高田さんのセミナーを拝見した時に感銘を受けました。ナインスケッチのお客様が土中環境を作っている工程を楽しんでおられる方が多かったからです。弊社のお客様にも、土中環境を整えるところから楽しんでいただきたいなと思い、その気持ちを伝えるようにしています。」
ーーそうなのですね。お客様の反応はいかがですか?
「感覚的な話ですが、土の環境が整っているところはやはり空気が綺麗なんです。お庭の空気感が変わるというか。お客様も最初は「ほんとに?」と疑心暗鬼なのですが、作っていくうちに「木下さんの言っていることが理解できたよ」と言っていただけています。」
ーー土中環境再生に理解があるお客様とどうマッチングしているのでしょうか。
「弊社の土中環境への取組やみどりへのこだわりがわかる事例をきちんと発信して、その内容に共感していただける方がお問合せくれるので自然とそのようなマッチングが生まれています。初めてお会いする方でも、庭やみどりへの熱量というのは打合せの段階ではっきりとわかります。安さだけを追求する方、相見積りの場合はお断りしており、最終的には自然を許容でき、自然の営みを楽しめる方とのご縁が生まれることが多い傾向にあります。」
ーー顧客で一番多いゾーンはどの世代でしょうか?
「ターゲットにしている層は50~60代です。子育てが終わり、時間に余裕がでてくる世代です。家のリフォームに合わせて庭のリフォームも検討したり、時間ができたから園芸にも向き合おうかと思う世代。ですが、最近は30代の新築外構の案件も増えてきました。以前はweb検索で弊社サイトを見てから問合せのパターンが多かったのですが、最近はまずインスタで弊社を知って事前に隅々までで見てくれている方が多くて。お会いする前から弊社のファンになってくれてる方も多く、ありがたい限りです。」
ーーきちんと特色を発信することで、ブランディングが成功していますね。
「そうですね、ブランドを理解してくれている方が増えました。今は安定的に問合せがあり、ありがたいことに工事も半年待ち、1年待ちという状況になってきました。私も現場に出ているので、どうしてもこなせる件数に限りがあり…。でもやはり全ての現場に関わりたいので、このペースでやりたいです。お客様にはご理解いただきながら、ですが…。」
ーーRIKCADを活用していただいていますが、体感はいかがでしょうか?
「導入前は手描きだったので修正がかなり楽になりました。特に、寸法が一発で出るのは本当に助かります。樹木も山採りの樹などは雰囲気があり、表現的にはとてもよい雰囲気になります。」
▲RIKCADで作成したイメージパース
ーー作図に関して気を付けていることはありますか?
「あえて樹木の名前は図面に入れないようにしています。壁の仕上げ材の種類も入れません。もちろん、ある程度のテイストは決めて入力しています。理由は、樹木や石材などの自然素材はひとつひとつ個性が違うので、あまりイメージを決定づけたくないというのはあります。」
ーー新しい提案としてサウナガーデンを提案されていますが、なぜサウナだったのでしょうか?
「庭が活用されていないという現状を目の当たりしたことがきっかけです。人工芝を敷いただけのもったいない庭の使い方ではなく、庭にでたい、庭で過ごしたいとたくさんの人に想ってほしいと思いました。庭にサウナを「置いて終わり」じゃないですよね。サウナに入ったあとお庭で外気浴して最高にリフレッシュできる、サウナを通じて“庭でどう素敵な時間を過ごしてもらえるか”が目的です。サウナはひとつのフックであって目的ではありません。」
ーーサウナ愛好家にとっては大きな呼び水になりますし、サウナ愛好家以外にも面白い取り組みとして注目されそうだと感じました。
「狙いはそこなんです。「庭があれば自宅にサウナが置けるんだ」という気づきに繋がってほしいんです。私は人々の心象風様に残るもの、原体験に根付いたものを繋いでいきたいと思っています。庭で楽しく過ごしたことを原体験として繋いでいってほしいのですが、住宅から庭が減っている現状では難しいですよね。サイズ展開も豊富なサウナは狭小地の庭でも設置できるんです。小さくてもマイサウナを起点にコミュニケーションが生まれます。」
ーーたしかに庭や、外部空間で過ごすことの多様性の気づきにつながりそうです。
「サウナの工事からエクステリア・外構工事に繋がったり、ホテルの屋上にサウナを設置したあとデッキや植栽の提案に繋がり受注したりと、サウナが起点で様々な事業展開が起きています。私はたまたまサウナをフックアイテムとして選びましたが、環境を整えた外部空間で心地よく過ごせる、親和性が高いものであれば何でもいいと思います。お客様は「サウナを置いてみたい」という要望から、場づくりや空間づくりを楽しむようになってライフスタイル・暮らしそのものが変化していきます。」
ーー暮らしが庭を起点にして豊かになるのは素晴らしいことですね。
「エクステリア・外構の工事価格が300万~500万円くらいだとして、これは車と並べるステイタスの世界だと私は思っています。高級車や高級時計の所有がステイタスであるのと同じように、質の高い庭を保持することがステイタスとして扱われるようになると、庭の価値が復権するのではないかな、と考えています。」
ーーまずサウナに入ってみどりの中で外気浴をする心地よさ、価値に触れてもらわなければならないということで、体験の場を提供しているのでしょうか?
「はい。弊社ではまずサウナに入ってみどりの中で外気浴していただき、みどりの中で過ごす心地よさを味わっていただくために体験できる展示場を設けております。いくら写真や言葉で提唱しても、やはり体験していただいて「なんて心地いいんだろう」と実感していただくのが一番の価値共有だと思っています。」
ーー今後の展望をお聞かせください。
「サウナをフックに新しい提案をスタートさせて、自分も刺激になってドキドキしました。その結果、もう一度自分も真摯に庭に向き合えたと実感しています。若いスタッフにもドキドキするような仕事をしてほしいし、庭に関わってワクワクするような現場を経験してもらえたら、と思っています。庭で過ごす価値を提供し続けて、次世代へ繋いでいきます。」
:取材協力:
株式会社彩園
代表取締役 木下恵介氏
サウナガーデン特設サイト
取材日 2024年2月12日